2021.03.08

すべてハンドメイドの1点もの。
かなり妖しのインテリア
「フレデリック・モラル展」

3月初めだというのに、気温が20度近くもありセーターもいらないような一昨日の土曜日、友人と大好きなラグビーを秩父宮ラグビー場に見にいきました。トップリーグ・ヤマハ発動機vsNEC戦。応援していたヤマハが勝ち、五郎丸選手がトライを取り、ご機嫌で表参道まで歩き、久しぶりにトーヨーキッチンのショールームに寄ってみました。と、モダンなキッチンやテーブルが並ぶいつもの風景とは違う雰囲気。何かちょっと妖しげです。

 折も折、ショールームでは、まさに妖しのインテリア「フレデリック・モレル展」が開催されていました。鮮烈や印象と妖しげな個性をもった、フランスのアートブランド「FREDERIQUE MORREEL」。最近注目されている、と聞いたことはありますが、見るのは初めて。ラッキー!とばかりに、小走りにショールームに。

 フレデリック・モレルは、亡くなった祖母のニードルワーク(針仕事)への想いから誕生したそうです。すべてニードルポイント刺繍のハンドメイド。ニードルポイントとは、キャンバスで生地全体をウールの糸で刺繍を施す技法。仕上がりはまるで織物のような印象。
ウールの糸を使用することから、タペストリーとして用いるだけでなく、室内の温度調整の役割も果たす実用性もあるとか。

 モレルはニードルポイント刺繍を施した布を、木の収納家具やベンチ、動物や植物の形にくり抜い木に貼り付けて、独自の世界観をもった作品を作り上げています。作品はすべて
ハンドクラフトで生み出され、世界じゅう探しても同じものは決して存在しない、すべて1点ものです。次世代を担うアートに対する目利きで知られるミラノのギャラリー“ロッサーナ・オルランディ”での展示をきっかけにブレイクし、最近では世界的なアートのイベントであるデザインマイアミの開催時期にマイアミ、その後ニューヨークのエルメスのショーウィンドウを飾るなど、世界に注目されるようになりました。そういえば、作品はエルメスのイメージに近いかもしれない、と感じました。

 どの作品も迫力満点でしたが、私が特に印象強かったのは、毒々しくも美しい色彩を見にまとった動物シリーズたち。忠実に再現された動物のスケールや仕草と、全身を覆う色鮮やかな刺繍のコントラストは迫力があります。目が合うと、話かけたくなるような生き生きとした表情です。

 日本の高度経済成長期は「モノを持つこと」が豊かさの象徴でした。生産効率の高い
大量生産品によって国内の生活水準を高めてきました。住空間も、モノに満たされながらも、どこかで見たような空間を大量に生み出すことになりました。今回のフレデリック・
モレルは、ひとつひとつに溢れ出る生命感は、画一的なインテリアに慣れてしまった私たちには面妖に映るかもしれません。でも、この艶やかな妖しさこそ、これからの豊かさのヒントになるかもしれない、と思いながら、会場を後にしました。
ポール・ヘニングセンは1894年、デンマークの女優アグネス・ヘニングセンを母としてデンマークで誕生。1911年〜14年、フレデリクスのテクニカル・スクールで、その後3年、コペンハーゲンのテクニカル・カレッジで学びました。伝統的な機能主義建築をキャリアのスタートとしましたが、だんだん興味は照明に移っていきます。そして1874年創業のデンマークの照明ブランド、ルイスポールセン社とのコラボレーションは1925年に始まり、1967年に亡くなるまで続きました。彼がパイオニアとして切り開いてきた照明分野の業績―影と光、グレア、光による色の再現、そしてそれら光の特性を人間の福利に結びつけるように利用することーは、今もルイスポールセン社のセオリーの基礎に。それゆえヘニングセンは近代照明の父とも呼ばれています。また、ヘニングセンはジャーナリスト、作家としても活躍しました。

 ポール・ヘニングセンはどうやって光をコントロールすべきか、というテーマに生涯の大半を捧げました。光源を効率よく、かつ効果的に活用するためには、対数螺旋という曲線をもつシェードが最も適していると考え、光の計算とテストを繰り返しました。ハルカが選んだテーブルランプ、PH Tableシリーズは、この対数螺旋という曲線をかたちどったシェードを3枚組み合わせたテーブルランプ。電球のフィラメントを螺旋の起点に置くことで、眩しいグレアが消え、同時にシェードが効率よく光を反射して、柔らかく心地よい光でテーブルを明るくする機能的なデザインです。1972年に発表された「PH3/2 Table」はPHシリーズのなかでも中間的なサイズ。長い年月を経ても愛され続ける名作テーブルランプです。

 機能を追求することで生まれた合理的シェードですが、洗練されたカーブが重なり合うシェードは優雅さもそなえて、光を消しても空間のアクセントとして目を楽しませてくれるデザイン。いろいろなインテリアスタイルの空間にフィットする柔軟性も持ち合わせ、また、小ぶりサイズなので、いくつか並べても圧迫感がなく、美しいインテリアをつくってくれます。こうした点も傑作といわれる理由でしょう。ハルカはご両親の新しい家に、決して主張しずぎず、優しくおさまる北欧のテーブルランプを選んだのでした。

 今回で名作照明店を舞台にした「ハルカの光」は最終回。とても残念です。もっとたくさん美しい照明を見たかった。第2部が放映されることを心から祈っています。また、照明だけでなく、椅子やソファなど家具にも、世界の名作はたくさんあります。なかなか目にすることができないこういう家具や照明。テレビドラマのなかでたくさんの人の目にふれて、よさを感じてもらい、普及すればいいな、と期待&祈念します。